バクトロール、アナログフォトカプラってなんだ!

Vactrol(バクトロール、アナログフォトカプラ)は抵抗を電流で制御できるデバイスなので、Arduinoで可変抵抗を作れる。これがとても魅力的でだ。さらに、そのアナログな特性ゆえ、モジュラーシンセに使われている

バクトロールとは?
バクトロールは、光依存抵抗(LDR)と発光ダイオード(LED)を組み合わせた光カプラーである。LDRにはCdSを使うことが多く、CdSとLEDが向き合って配置されている。LEDが点灯すると、LDRの抵抗値が変化する。この特性を利用して、電圧制御フィルター(VCF)や電圧制御アンプ(VCA)などのモジュールで使用される。応答が緩やかで、これを利用したエンベロープ特性を作れる。

モジュラーシンセにおけるバクトロールの役割

用途

  • VCF(電圧制御フィルター):
バクトロールは、フィルターのカットオフ周波数を制御するために使用される。LEDの明るさを変えることで、LDRの抵抗値が変わり、フィルターの周波数特性が変化する。

  • VCA(電圧制御アンプ):
バクトロールは、音量を制御するためにも使用される。LEDの明るさに応じてLDRの抵抗値が変わり、音量が調整される。

  • エンベロープジェネレーター:
バクトロールは、エンベロープの生成にも使用される。エンベロープのアタックやディケイの時間を制御するために、LDRの抵抗値を利用する。

バクトロールの利点

  • 滑らかな応答: バクトロールは、滑らかで自然な応答を提供できる。これにより、モジュラーシンセの音がより有機的で自然なものになる。
  • ノイズの低減: バクトロールは、電子的なノイズを低減する効果がある。これにより、クリーンな音質が得られる。

具体的な使用例

  • Make Noise Optomix: このモジュールは、バクトロールを使用したローパスゲートで、音量とフィルターを同時に制御する。
  • Doepfer A-101-2 Vactrol Lowpass Gate: こちらもバクトロールを使用したローパスゲートで、フィルターとアンプの機能を兼ね備えている。

入手可能なバクトロール

モジュラーシンセ用としては、 VTL5C2 VTL5C3 が定番の模様。前者は応答時間が比較的長く、余韻あるDecay特性が作れるのかもしれない。かっては秋月で扱っていたようだが、今はない。Aliexpressで入手可能なようだが、特性は偽物のようだ。
LCR0203 は秋月で扱いがあり、HAGIWOのモジュラーシンセによく使われている。

型番 オン抵抗(@10mA) オフ抵抗(@10秒後) オンタイム オフタイム 最大LED電流 特徴 入手先
VTL5C1 600Ω 50MΩ以上 2.5ms 35ms 40mA 高い暗抵抗、広ダイナミックレンジ、高応答 困難aliexpress偽
VTL5C2 800Ω 1MΩ以上 3.5ms 500ms 40mA ON高応答、温度特性良好、緩やかなオフ応答 困難aliexpress偽
VTL5C3 10MΩ以上 2.5ms 35ms 40mA 高応答、広ダイナミックレンジ、温度特性良好、 困難aliexpress偽
VTL5C4 125Ω 400MΩ以上 6ms 1.5s 40mA 非常に高い暗抵抗、超緩やかなOFF応答時間 困難aliexpress偽
VTL5C9 50Ω 50MΩ以上 4ms 50ms 40mA 非常に高い暗抵抗、適度な応答時間 困難aliexpress偽
LCR0202 50Ω 110MΩ 2.5ms 40mA - 秋月電子
LCR0203 50Ω 110MΩ 2.5ms 40mA - 秋月電子
LCR1506 50Ω 110MΩ 2.5ms 40mA - 秋月電子
LLI-2203 10mA - 秋月電子


データシートは下記をクリックすると見える。

VTL5C2

VTL5C3

フォトカプラ入力側の発光ダイオード(LED)は、長時間使うと発光効率が下がる。周辺温度によっても変わる。グラフにおける複数の線はこの違いを示している。
  1. 25°C 24 hours @ no input
  2. 25°C 24 hours @ 40 mA input
  3. +50°C 24 hours @ 40 mA input
  4. 20°C 24 hours @ 40 mA input

LCR0203

データシートには適切な特性が載っていなかったのでWebより勝手に拝借。

データシートで暗抵抗を比べると、VTL5C3 > VTL5C2 > LCR0203 の順に1桁づつ大きいと言った感じだ。

シミュレーションモデル

ネットを探すと、VTL5C3 と VTL5C2 は LTspice LTspice@groups.io で見つかった。VTL5C2 には何種類かのモデルが挙がっていたので、タイムスタンプが新しいものを使用した。
LCR0203 は、伝スパ様がモデルづくりを 動画 にされている。

暗抵抗特性(静特性)

各々のバクトロールの特性を比較するため、入手したモデルを使って下記の回路で解析した。
各モデルでの任意電流における抵抗を数点ピックアップして、データシートの特性と比較して、同じであることを確認した。
LCR0202 は ネットで見つけた電流と抵抗の静特性 とにあと載せる特性を使って、伝スパの 動画 に倣って自作したモデルを使っている。




抵抗応答性

ON電流を1mAにしたときのステップ応答をシミュレーションする。上図の静特性に示すようにそれぞれのバクトロールで暗抵抗が異なる。そこで、50KΩの制限抵抗を並列に設けてみた。これで暗抵抗は同じになる。

VTL5C2 VTL5C3 は、データシートと同様の応答時間である。このモデルは応答性も考慮されていることがわかる。
LCR0203 の応答時間は、それらに比べてかなり長い。データシートには記載がないので、そこでの比較では判断はできないが、応答性についても実験データを忠実に再現したモデルづくりをされていることが動画で分かる。


Aliexpress の VTL5C3 (MOD WIGGERのレポート)


TheSlowGrowth ≫ Mon May 30, 2016 6:49 pm
みなさんこんにちは。

私はこれらをたくさん注文しました:http://www.aliexpress.com/item/Original ... 35520.html
VTL5C と書いてあるので、どれくらい優れているのか、本物の VTL5C と比べてどうなのか気になりました。いくつか測定してみました。結果は次のとおりです。

まず、異なる駆動電流に対する抵抗を単純に測定しました。
真っ暗闇の中では抵抗を測定できませんでしたが、 抵抗は 10MOhms を超えていました。しかし、駆動電流を流すと、抵抗は本物の VTL5C3 の約 1/1000 倍でした。したがって、この Vactrol は VTL5C3 回路の直接の代替品としては適していません。 VTL5Cデータシートのグラフから判断すると、これは VTL5C10 に近いでしょう。4つの Vactrol を測定しました (これ以上は面倒なのでやめました)。4つのうち 3 つはほぼ同じでした。ただし、1 つの Vactrol は大きく異なっていました。
変動を把握するために、さらにいくつか測定しようと考えています。 今のところ言えることは、マッチングが不可欠だということです。

2つ目のテストは、Vactrol の立ち上がり時間と立ち下がり時間と全体的な応答でした。添付ファイルの回路図を使用しました。ログ コンバーターは、ローパス ゲートで知覚されるピッチ、またはバクトロール ミキサーで知覚されるボリューム (どちらもログ応答) の概要を示すためのものです。正確ではありませんが、正確である必要はありません。添付ファイルでは、lfo 信号が供給される 1 つのバクトロールの測定値を確認できます。プロットのラベルは、回路図のプローブ ポイントを示しています。駆動電流はスケールどおりです。

最後のテストは、バクトロール 1、2、3 の立ち上がり時間と立ち下がり時間を比較することでした (スコープのチャンネルが他にありませんでした...)。開始レベルと終了レベルが同じになるように、トレースを適宜スケールしました。 立ち上がり時間は、すべてで約 5 ミリ秒で実質的に同じでした。立ち下がり時間についても同様で、約 150μs でした。

添付ファイル
Vactrol 耐性.pdf : 異なる駆動電流に対するVatrol抵抗

動的性能を測定するためのテスト回路
上述の説明は下記のフォーラムからの引用である。このレポートでは、Aliexpressで買った VTL5C3 は偽物で、次の問題が指摘されている。
  • 抵抗が正規品の1/1000ほど。
  • 立ち上がり時間は、すべて約 5 ミリ秒で実質的に同じでした。立ち下がり時間も同様で、約 150μs でした。



わずかな期待を持って購入してみた。

出力抵抗特性を測ると、このレポートと同様に1/1000程度の抵抗であった。測定方法は、伝スパ様の 動画 に倣った。

Aliexpress の LCR0202とLCR0203 (MOD WIGGERのレポート)

同じ引用元に、Aliexpress購入のLCR0202とLCR0203 のレポートもあったので載せておく。

raph36 ≫ Wed Jul 27, 2016 11:26 am

皆さんに、設計を LCR0202 と LCR0203 に適応させることをお勧めします。これらは、Ali で 1 個 0.30 ユーロで入手できます。0203 の場合は問題ありませんが、0202 は LED 部分にスイッチ ピン配置があります。

現在、ピーナッツの代替として中国製の VTL5C3 ドロップインがあり、 thomas white のローパス ゲートでテストされています。

VTL5C3 とほぼ同じパフォーマンスを発揮します。入力に 47R オームなどのもう少し抵抗が必要です。 これにより、非常に優れた歪みが生じます。最終的には 1 つのチャネルに保持しました。それ以外は、速度はほぼ同じで、範囲も同じです。 Charactaristic LCR0202


raph36 ≫ Wed Jul 27, 2016 11:26 am

これは中国のaliexpress VTL5C3、別名 LCR0203 LCR0202 に関する私の最終レポートです。

これらは両方とも、4つの Thomas white デュアルローパスゲートとマッチした VTL5C3 / 2 に対して耳でテストされました。手動で選択されたわけではないので、メーカーの仕様の変更を登録できました...

LCR0202 (箱入りのもの):
これは非常に非常によく機能し、高速で範囲が広い(高周波数からほぼLFOのような)だけでなく、仕様も非常に厳格でした(3つのランダムにマッチしたペアで範囲にほとんど変化なし)。 唯一の問題は、VTL5C3と比較してピン配置が逆で、脚が非常に小さいため、裏側に取り付けるか、抵抗脚で何とかする必要があります。また、自己発振時に VTL5C3/2 と比較して若干の (美しい) 歪みがあることにも気付きました。これは、LED と直列に非常に小さな抵抗 (47R など) を接続することで防止できます (歪みはそのままにしました)。これは、わずかなコストで、どの VTL5C3 とも簡単に交換できます。

LCR0203 (管状のもの) :
これはかなりがっかりしました。メーカーの仕様によると、LCR0202 とはパッケージが異なるだけのはずです。スペックはそれぞれ大きく異なるように思えました。ランダムに選んだ 2 つのペアのうち、 1 つは LCR0202 と VTL5C3/2 とほぼ同じパフォーマンスを示しましたが、 もう 1 つは動作しなかったか、スペック外だったため位相キャンセルが発生しました。LDR の 1 つを変更した後は動作しましたが、範囲がはるかに狭くなりました (他のものほど低くはなりませんでした)。そのため、 ランダムに選んだ 5 つの LDR のうち、適切なスペックのものは 2 つだけでした。


一致させれば使用できると思いますが、間違いなく LCR0202 を選びます。
皆さん、楽しいバクトロリングを

秋月扱いLCR0202, VTL5C3など

かっては、VTL5C3が秋月で売られていた。その特性を測ったブログがあたので引用しておく。静特性については、LCR0202はLCR0203とほぼ同じと思う。

LCR0203



モジュラーシンセに使われているバクトロール

型番 オン抵抗(@10mA) オフ抵抗(@10秒後) オンタイムto 63% オフタイムto 100 k ピークLED電流 特徴
VTL5C3 10MΩ 2.5ms 35ms 40mA 高速応答、広い抵抗範囲
VTL5C2 800Ω 1MΩ 3.5ms 500ms 40mA 中速応答、安定した性能
VTL5C3/2 500Ω 10MΩ 2.5ms 35ms 40mA デュアルLDR、高速応答
NSL-32 500Ω 10MΩ 3.5ms 65ms 20mA 高感度、安定した性能
VTL5C4 125Ω 400MΩ 6ms 1.5sec 40mA 高いオフ抵抗、長いオフタイム
NSL-19M51 1kΩ 10MΩ 5ms 50ms 20mA 中速応答、広い抵抗範囲

LPGをシミュレーション

Low Pass Gate(LPG)は、バクトロールを使用したモジュラーシンセのコンポーネントである。LPGは、制御電圧(CV)によってカットオフ周波数が変わるローパスフィルタとゲートの機能を組み合わせたものである。

バクトロールのLEDが点灯すると、フォトレジスタ(CdS素子)の抵抗値が下がり、フィルタのカットオフ周波数が変化する。これにより、音のフィルタリングと音量の制御が同時に行われる。LPGは、滑らかな応答と低ノイズの特性を持ち、特にパーカッシブなサウンド生成に適している。

この特性をシミュレートしてみる。CVにより、ローパスフィルタを構成しているバクトロールの出力抵抗が変化し、カットオフ周波数が変わる。CVが小さなときにはカットオフ周波数は可聴域以下になるので、音が聞こえなく(Gateに)できる。






VCAをシミュレーション

Korg MS50 Schematics の中から見つかったVACTROLのVCA回路を使って、VCAの機能を試してみる。”MYCA” が該当する回路図のようだ。

Next Post Previous Post