可変レギュレータをマイコンで制御する
概要
この動画で興味深いことをやっていたので、そっくりまねてみました。
実現方法
LT1086のデータシートから引張ってきた出力電圧の可変方法は下図です。
$V_{OUT}$は次のように表すことができます。右辺の第1項:既定の電圧 1.25V と可変電圧の第2項
$$ V_{OUT} = 1.25 \left(1+\frac{R2}{R1}\right) = 1.25 + 1.25\frac{R2}{R1} \tag{1}$$
つまり、第2項の可変電圧をマイコンでつくると、可変抵抗に変えてマイコンで$V_{OUT}$を制御できるという仕組みです。 このやり方のシミュレーションしたものが下図です。
ADJの電圧として、0~9Vを与えると、$V_{OUT}$は1.25Vから10.25Vになりました。
要件
$$ V_{OUT}-V_{ADJ} = 1.25 \ [V]$$ なので、R1を流れる電流は、$$ I(R11) = \frac{1.25}{R11} = \frac{1.25}{240} = 0.0052\ [A] \tag{2}$$
つまり、R1に5.2mAを流しつつ、$V_{ADJ}\text{を}V_{OUT}-1.25[V]$に制御すれば マイコンで制御できる可変電源が作れることになる。
回路
これを実現できる回路がこれになる。
図の下段V2がマイコンで、その出力電圧は3.3Vとか、5Vなので、それを増幅する非反転増幅用のオペアンプの出力を"Cont"としている。
上段のレギュレータ側は既定のリファレンス抵抗R11を通して、常時電流をGNDに吐き出すR12と、"Cont"信号に繋がるR2を設けている。
仕様
レギュレータの仕様を次のように決める
- 出力電圧: 2.9 から 10V
- マイコン出力: 0 から 3V, 5mA以下
R12とR2
最小値の条件より
$V_{OUT}=2.9\ [V],\ \ V_{Cont} =0 \ [V]$なので、R12とR2はADJとGND間で並列抵抗を構成していることになる。
R12とR2の並列合成抵抗をR12//R2、この合成抵抗を流れる仮想の電流を$I_V$とするとき、$V_{ADJ}$に対して次の式が成り立つ。
$$ V_{ADJ}= V_{OUT} - 1.25 = R12//R2 \times I_V \tag{3}$$
この条件では電流$I_V=I(R1)$なので、(3)式より、
$$ R12//R2 = \frac{2.9-1.25}{I_V} = \frac{1.65}{0.0052} = 317.3 \ [\Omega]\tag{4}$$
最大値の条件より
$V_{OUT}=10\ [V],\ \ V_{Cont} =10 \ [V] \text{なので、}V_{ADJ}=10-1.25=8.75\ [V]\text{となり、}V_{Cont}\text{と}V_{ADJ}$の電圧降下がR2で発生する。このとき、マイコンの出力電流を5mA以下にしたいので、 $$ V_{OUT}-V_{ADJ} = 10 - 8.75 = 1.25 $$ $$ R2 > \frac{1.25\ [V]}{5m\ [A]} = 250\ [\Omega] \tag{5}$$
さらに、$V_{ADJ}$について、R12を流れる電流をI12とするとき、 $$ V_{ADJ} = R12 \times I12 = 8.75$$ となる。ここで、I12はR11を流れる電流とR2を流れる電流の和として、次式で表せる。$$ I12 = I(R11) + \frac{V_{Cont}-V_{ADJ}}{R2} = 0.0052 + \frac{1.25}{R2} \ [A]$$これらの2式より、$$R12=8.75\times \frac{1}{ 0.0052 + \cfrac{1.25}{R2}}\tag{6}$$
以上より、(4),(5),(6)式の成り立つR12とR2を求めればよい。これはResistor Solverを用いて求める。
可変レギュレータ
以上の内容でシムレーションします。
マイコン出力V(002)(赤色)0~3V をオペアンプで3倍に増幅V(cont)(青色)0~9V すると、V(adj)(緑)は1.6~8.8Vになります。このときのレギュレータ出力V(out)(黄色)は2.9から10Vになっています。
なお、各々の抵抗を流れる電流は表のようになっています。I(R11 = I(R2) + I(R12) とならないのは、レギュレータのADJ端からの電流があるためです。
V(out) [V] | I(R11) [mA] みどり | I(R2) [mA] ピンク | I(R12) [mA] 茶色 |
---|---|---|---|
2.88 | 5.17 | 3.74 | 1.49 |
6.00 | 5.17 | 0.89 | 4.33 |
10.04 | 5.17 | -2.78 | 8.00 |
15V出力の事例
もう一例として、最大電圧15Vにしてみました。
図示の抵抗で、2.9Vから15.9Vの出力になります。