標準オペアンプ構成によるハイサイド電流の検出
# 概要
測定は、シャント抵抗の両端の電圧を測って換算する方法を取ります。 よくある方法なので簡単に思われますが案外難しいのです。 負荷の電源側を測るのがハイサイド測定。GND側を測るのがローサイド測定です。 それぞれ、メリットやデメリットがあります。
ローサイド測定は、GNDが基準になるので回路が単純になります。 ただ負荷のGNDが浮く状態になりますので、ケーブル等で他の機器に接続すると正常に測れないことあります。 装置内部の特定部分の電流を測るのに使われることが多いです。
ハイサイド測定は、高(低)電圧側が基準になるので回路が複雑になります。 複数電源を個別に測ることが出来ます。
ハイサイド
電流測定回路と定電流回路
標準オペアンプ構成によるハイサイド電流の検出
引用元:High-Side Current Sensing with Wide Dynamic Range: Three Solutions
図1は、AD8628を利用した、オペアンプ・ベースのディスクリート・ソリューションです。ほかのオペアンプでも同じ構成が可能ですが、必要な性能として低入力オフセット電圧、低オフセット電圧ドリフト、低入力バイアス電流、入力と出力のレールtoレール振幅機能があるとよいでしょう。その他の推奨アンプには、AD8538 、AD8571 、AD8551 があります。

この回路は、ハイサイド電流I をモニタリングしています。
- アンプには、この場合5.1Vのツェナー・ダイオードで電源バイアスがかけられています。
- これにより、アンプが高同相レベルで安全に動作し、
- その電源電圧が許容限度内で安定性を維持し、
- その間出力はMOSFETによって電流に変換され、
- $R_L$ によってグラウンド基準の電圧に変換されます。
このようにして出力電圧がコンバータ、アナログ・プロセッサ、その他のグラウンド基準の部品(アンプやコンパレータなど)に供給され、さらにシグナル・コンディショニングが行われます。
この構成では、$R_G$ 両端の電圧は$R_{SHUNT}$ 両端の電圧と等しくなります。
MOSFETからのフィードバックによってハイ・インピーダンスのオペアンプの両方の入力が同じ電圧に維持されるためです。$R_G$ を流れる電流は$FET$と$R_L$ を通り、$V_{OUTPUT}$ を生成します。
シャント抵抗を流れる電流I と$V_{OUTPUT}$ の関係は、式1で表すことができます。
$$ V_{OUTPUT} = \frac{I \times R_{SHUNT}}{R_G} \tag{1}$$
$R_{SHUNT}$ の選択 :
$R_{SHUNT}$ の最大値は、最大電流における許容消費電力によって制限されます。$R_{SHUNT}$ の最小値は、オペアンプの入力範囲と誤差の許容値によって決まります。10Aを超える電流をモニタリングする場合、通常、$R_{SHUNT}$ の値は1 ~ 10mΩになります。1個の抵抗で消費電力の条件を満たせない場合、あるいは基板に搭載するには大きすぎる場合は、複数の抵抗を並列に接続して$R_{SHUNT}$を構成しなければならないことがあります。
$R_G$ の選択 :
$R_G$を使用して、ハイサイド電流に比例した電流をローサイドに変換します。最大RGは、PチャネルMOSFETのドレイン-ソース間のリーク電流によって制限されます。
たとえば、一般的なエンハンスメント型Pチャネル・バーチカルDMOSトランジスタBSS84を考えてみましょう。さまざまな条件における最大$I_{DSS}$ を表1に示します。
$R_{BIAS}$の選択:
$R_{BIAS}$を流れる電流はオペアンプのマイナス電源と、電圧一定に機能するツェナー ダイオード電圧$V_Z$ に繋がっており、オペアンプの電源電圧を決定します。アンプ電流$I_{SUPPLY}$が実質的にゼロで$V_{IN}$が最大の場合、ツェナー ダイオードを流れる電流が最大安定化電流$I_{Z\ MAX}$を超えないことを確認します。
安定したダイオード電圧を確保するには、 $I_{SUPPLY}$が最大で$V_{IN}$が最小の場合、ダイオードに流れる電流が最小動作電流$I_{Z\ MIN}$より大きくなければなりません。
ツェナー ダイオードと$R_{BIAS}$ は、後続の回路から高いコモンモード電圧を取り除き、低電圧精度のオペアンプの使用を可能にするため、このソリューションの重要なコンポーネントです。最高の電圧安定性を実現するには、ツェナー ダイオードの動的抵抗と温度ドリフトが低い必要があります。
R1の選択:
R1 は、入力過渡現象がオペアンプの電源電圧を超えた場合にアンプの入力電流を制限するために使用されます。10kΩの抵抗を推奨します。
オフセット電圧とオフセット電流
選択したオペアンプのオフセット電圧$V_{OS}$とオフセット電流$I_{OS}$は、特にシャント抵抗の値が低い場合や負荷電流が低い場合に重要です。$V_{OS} + I_{OS}\times R1$ は$I_{MIN} \times R_{SHUNT}$より小さくなければなりません。そうしないとアンプが飽和する可能性があります。したがって、最適なパフォーマンスを得るには、クロスオーバー歪みがゼロのレールツーレール入力アンプが推奨されます。
ハイサイド電流センス - 明確化が必要
引用元:High Side Current Sense-Clarifications Required
Question
出力電圧の式がどのように導かれるか教えてください。
MOSFET の M1、M2、D1 および Ref の使用方法を教えてください。
Answer
- LTC2063アンプへの入力をVxとします。また、シャント抵抗$R_{SENSE}$で発生する電位差を$V_{SENSE}$とします。
- LTC2063アンプの反転/非反転入力での電圧はイマジナリーショートで等しいので、
- $I_{SENSE}$と$R_{SENSE}$が交差する上部ノードの電圧は$V_{SENSE} + V_X$となります。
- このノードの電位と 反転(-) 入力の差を$R_{IN}$で割ると、M1 を通過する $I_L$ 電流が得られます。
- M1 トランジスタが動作するため、ドレイン電流 $I_L$ が流れます。 (これに関する追加情報が必要な場合は、安定化された電流源を調べます)。
- この電流$I_L$が流れると、$R_L$ 抵抗の両端に電圧が発生し、電圧$V_{out}$が計算できます。
- 電源は負電源またはグランドより5.5Vしか高くできないため、REFはLTC2063をデバイス仕様内で動作させるために使用されます。
- M2は、LTC2063の負電源に4.5V~90Vの範囲のコモンモード電圧をフロートさせる手段を提供します。
- D1 は M2 のバイアスに役立ちます。
実際にここに同様の回路があり、デバイスのグランドをフローティングするように設計する方法を示します。
もう 1 つ注意すべき点は、そのようなコモンモード電圧が必要ない場合は、当社の INA190 (VCM<40V) を検討して、BOM 数を減らすことをお勧めします。
それ以外の場合、LTC2063 の TI の代替品としては、LPV811、LPV821、OPA369 などが考えられます。